INTERVIEW 開発者インタビュー

「無限レシピ」とは
これまでにない、
全く
新しい減塩システムです。

無限レシピを開発しようと思ったきっかけを教えてください。

私は島根大学の医学部キャンパスで医学研究・教育に携わって40年が経ちます。専門は生化学(栄養学)で生活習慣病やがんに関係する基礎医学研究を一貫して続けてきました。その研究の成果の社会実装(見える化)として、無限レシピの開発を決意しました。その科学技術が高血圧と日本の医療を救うと信じて共同開発に着手しました。

医学の道を志したきっかけを教えてください。

医学には患者さんを診る臨床医学と、その基礎となる基礎医学(生化学、解剖学、薬理学など)があります。私は、中高生の頃から探究・好奇心が強く、基礎医学の教育・研究に従事する大学教員の道を選びました。医学分野で取得した特許技術は10件を超えます。その1つ(特許第6714238号)を無限レシピに活用します。

教授から見る現代日本の食生活の課題はどういったところにありますか?

高血圧は3人に1人の国民病であり、高血圧性疾患の年間医療費は1兆7000億円(2019年 厚生労働省)と膨大です。高血圧対策には減塩が重要ですが、減塩食生活を日々送るのはとても難しく、高血圧患者自身と医療従事者は特段の対策がなく困り果てているのが現状です。高血圧は生活習慣病と関わりますから、減塩対策は急務と言えます。

また、日本の食生活の理想形を教えてください。

1日あたりの塩分摂取量の世界基準(WHO)はわずか5gです。一方で日本人は、その2倍近くを摂取しています。「日本人の食事摂取基準」の目標値は成人男性が7.5g未満、女性が6.5g未満ですから、日本の食生活がこの値に近づくのが理想です。未成年でも同様で幼い頃からの食育が大切とされ、減塩しなくてよい人は誰もいません。

無限レシピをどのような人に使って欲しいですか。
また、利用した人にどう感じ、どう変わって欲しいですか。

高血圧で減塩に苦労されている全ての方に使っていただきたい。そして、美味しく、楽しく、楽な減塩生活を続けていただきたいです。「減塩」は決して難しくないと感じ、続けることで血圧の状態が安定することを実感し、無理なく頑張ろうという気持ちになっていただきたい。この行動変容が長く維持されることを願っています。

減塩食は飽きてしまうというようなデメリットがあるとお聞きしました。
無限レシピはどういう形で克服されましたか。

市販の減塩弁当はメニューが限られています。やがて高血圧の患者さんは飽きてしまい、食欲が落ちて病態が悪化することも少なくありません。また必ずしも美味しい弁当ばかりとは限らず、「美味しくないものを食べてまで長生きしたくはない」と患者さんの声を聞いたときは衝撃的でした。そこで食に対する概念を変えて、新しい食事システムを考案しました。一般的には味付けして料理しますが、無限レシピでは、使用する全ての食材に味をつけないで加熱加工し、最後に減塩ソースや調味料で味を整えます。これにより、食材の多様な組み合わせや減塩ソース・調味料との組み換えにより非常に多くの献立が可能になります。このシステムを「無限レシピ」と命名しました。

開発時、どのようなことで苦労されましたか。

無限レシピを机上の空論で終えたくなく、自宅で“調理実習”して食の革命を確信しました。しかし当初は、味をつけていない食材とソースが馴染むか(口の中で喧嘩しないか)など手厳しい意見が、共同開発を希望する食品メーカー関係者からありました。焼肉で肉とタレが喧嘩しますか?と反論すると必ず一度食べてみたいと声が上がりました。そこで、地元企業の賛同を得て5年間に及ぶ開発研究を続けて事業化に至りました。日本食はユネスコ無形文化遺産に登録されており、立派な和食という文化ですが、どうしても余計な味付け(食材に醤油などの調味料が多く染み込む)が塩分過多となります。医療専門家(管理栄養士など)も最後に味付けすることを推奨しています。

SDGsへの取り組みもされているとお伺いしました。
どういったきっかけで取り組みをはじめられたのでしょうか。

島根特産食品と特許を活用した食の技術革新と地域創生」の事業責任者でした。廃棄等で利用されない地元食材の活用を目指し、JAしまね様と協働で取り組んでいます。商品の一部に取り入れる計画です。

今後どういった商品を開発したいなど展望は何かございますでしょうか。

生活習慣の乱れに起因する高血圧・糖尿病・脂質異常症等の予防改善を支援するシステムを新しい特許として申請しました(特願2023-086825)。無限レシピの技術を使い、腸内細菌叢(腸内フローラ)や血液検査(生化学)のデータ等に基づき、個々の病態、健康志向、健康状態などを反映させたオーダーメード食(個々に理想的な食事)を商品として提供し、生活習慣病の予防改善を可能にします。

無限レシピは利用者様(高血圧患者・非高血圧患者)にとってどのような存在になると思われますか。

高血圧患者さんにとっては減塩食の大きな選択肢になるはずです。毎日毎食は難しいので、1日に1〜2食でも食習慣に取り入れていただければと思います。非高血圧者の方も高血圧の予備軍として意識を高め、無限レシピが生活の一部になればと願っています。個(孤)食の方も是非、活用してください。

プロフィール PROFILE

株式会社みらい無限レシピ
代表取締役 中村 守彦
(島根大学地域未来協創本部地域医学共同研究部門 教授)

私は島根大学の医学部キャンパスで医学研究・教育に携わって40年が経ちます。専門は生化学(栄養学)で生活習慣病やがんに関係する研究を一貫して続けてきました。医師ではなく基礎医学者ですが、臨床医学講座(臨床免疫・神経内科)と基礎医学講座(生化学)に各々10年間在籍し、そして産学連携業務に関わる部署に20年間勤務してきた、全国でも稀に見るユニークな教員です。
国立大学法人化後には、産学連携が活発になり、大学の役割として研究成果を社会に役立てることが強く求められることになりました。
この研究成果の社会実装(見える化)に私自身も関わり、地域社会(地元企業、地方自治体など)と深い関係をもつことになります。
そして、令和5年10月に「株式会社みらい無限レシピ」を起業しました。弊社は、島根大学発ベンチャーの称号を授与されたヘルスケアベンチャーです。称号授与は、特許技術と研究成果を基にした起業が条件です。
創業当初は、高血圧を対象にし、生活習慣病全般の予防・改善に貢献する企業成長を目指しています。世界初の食の革命により、皆様の健康寿命の延伸に貢献いたします。
今後とも変わらぬご厚情を賜りますようお願い申し上げます。